30歳を過ぎたあたりから「前より疲れやすい」「朝起きてもスッキリしない」「階段で息が上がる」「トレーニングの質が落ちた気がする」──こうした変化は、単なる気のせいではありません。
実はこれ、加齢にともなうミトコンドリア機能の低下が原因である可能性があります。
今回はEvolveがいつも大事にしている「科学的根拠ベース」で、
- なぜ30歳以降でミトコンドリアが落ちるのか
- ミトコンドリアが落ちると何が起こるのか
- そしてどう回復させるのか
- そのための“本物の”HIIT(ヒート)のやり方
を、論文ベースでわかりやすくまとめていきます。
「HIITがいいって聞いたから、なんとなく全力ダッシュしてる」
この状態だと、**頑張ってるのに効果が出ない“なんちゃってHIIT”**になります。今日はここをちゃんと終わらせましょう。
ミトコンドリアってそもそも何をしているのか
ミトコンドリアは、細胞の中にある超小型の発電所です。
私たちが筋トレをするときのエネルギー、歩くときのエネルギー、家事をするときのエネルギー、仕事で頭を使うときのエネルギー──それらの多くがミトコンドリアで作られたATPというエネルギー通貨で供給されています。
つまり、ミトコンドリアが元気なら人間も元気で、
ミトコンドリアがしおれてくると人間もしおれてくる、というとてもシンプルな構図です。
2016年オレゴン健康科学大学のデータ:30歳で変化が始まる
2016年にオレゴン健康科学大学から、加齢にともなうミトコンドリア機能の変化を分析したデータが出ています。
この研究では、細胞レベルでミトコンドリアの変異や機能低下がいつから始まるのかを確認したところ、30歳以降から機能低下のサインが確認され、40歳以降でより顕著になるという結果が示されました。
つまり、
- 20代:そこまで問題なし
- 30代前半:なんか疲れやすいけど頑張れば動ける
- 40代以降:もう頑張っても回復しにくい
というフェーズに入ってくる、ということです。
ここで怖いのは、放っておくとじわじわ悪くなるタイプの変化だという点です。
「昨日より今日が明らかにしんどい」ではなく「ここ2〜3年なんか落ちてきた気がする」という感じで進むので、対策が遅れやすいんですね。
ミトコンドリア機能が落ちると何が起こるか
ミトコンドリアの機能低下は、単純に「疲れやすくなる」で終わりません。論文ベースで分かっている影響を並べると、次のようなものがあります。
- 慢性的な疲労感
エネルギー産生が落ちるので、動く前からしんどい。トレーニングの1セット目から重たく感じることも。 - 運動不耐性(ハードな運動に耐えられない)
強い運動をするとすぐにキツくなってしまい、結果的に高強度トレーニングができなくなります。 - 活性酸素の増加と炎症の増大
ミトコンドリアでエネルギーを作る過程で活性酸素も発生します。機能低下するとこれが増えやすくなり、細胞レベルのダメージが増えます。これは将来的な認知機能の低下・心血管疾患・がんのリスク上昇にもつながると報告されています。 - 脳機能への悪影響
脳はエネルギーを大量に使う臓器です。ミトコンドリアが落ちると、集中力の低下・不安感・うつ症状の出現が起きやすくなります。 - 筋肉量・筋力の低下
筋肉も当然ミトコンドリアを使ってエネルギーを作っています。ここが落ちると筋衛星細胞の働きも落ち、筋肉の維持・再生力が下がるので、放っておくとサルコペニア方向に進みやすくなります。
つまり、「30歳を超えたのにトレーニングの質が下がってきた」「減量が前よりしんどい」「最近疲れが抜けない」というのは、ただの根性不足ではなく、エネルギー工場そのものが老化しているサインである可能性が高いということです。
ではどうやって回復させるのか?答えはHIIT(ヒート)
ここで出てくるのが高強度インターバルトレーニング(HIIT/ヒート)です。
「HIITは痩せる」「短時間で終わる」という側面だけが拡散していますが、本当に重要なのはそこではありません。HIITはミトコンドリアを“作り直す”刺激になるという点が重要です。
2023年キングサウド大学のメタ分析
2023年にキングサウド大学から、HIITによる骨格筋ミトコンドリア機能の改善効果をまとめたメタ分析が出ています。
12件・合計268名を対象に、最短3週間〜最長16週間のHIITを行ったところ、ミトコンドリア機能は有意に改善し、効果量は0.69と大きい水準だったと報告されています。
さらに面白いのは、
- 週あたりの回数
- 1回あたりの時間
よりも、継続している期間のほうが効果に強く影響していたという点です。
つまり「1回で追い込めたかどうか」よりも「何週間・何ヶ月続けたか」のほうがミトコンドリアには効く、ということです。
なぜかというと、HIITは急激で繰り返しのエネルギー需要を筋肉に与えるトレーニングだからです。高強度で動くと、細胞は「もっと発電所(ミトコンドリア)が必要だ!」と判断し、ミトコンドリアの数も質も上げようとします。
これを**ミトコンドリアの生合成(ミトコンドリアバイオジェネシス)**と言います。ややこしい言葉ですが、要は「HIITをちゃんとやると細胞が若返る方向に行く」と覚えておけばOKです。
“なんちゃってHIIT”を卒業するための4つの条件
ではここからが実践編です。動画でも話していたとおり、HIITを「本物」にするには4つの条件があります。ここが1つでも抜けると、ただのしんどい運動になります。
① 最大心拍数の80%以上に上げること
まずこれが絶対条件です。
HIITは「高強度」だから効くのであって、心拍が上がっていなければ効果は激減します。目安は最大心拍数(220−年齢)の80%以上。慣れてきたら90%付近まで上げてもOKです。
例)35歳なら最大心拍数は
220 − 35 = 185
その80%は約148拍/分。
ここまで上がっていないと、HIITとは呼びにくいです。
② 運動:休憩の比率を2:1または1:2にする
高強度で運動→少しだけ休む→また高強度、というのがHIITの基本です。おすすめは
- 30秒全力 → 15秒休む(2:1)
→ 心肺機能を上げたい人向け - 15秒全力 → 30秒休む(1:2)
→ パワー・スピードを上げたい人向け
動画でも言っていたとおり、まずは2:1から始めると心拍を基準値まで上げやすいのでおすすめです。
③ インターバル中も完全には止まらない
心拍を80%以上に上げたあと、急に完全停止すると心臓への負担が一気に高くなります。
そのため休憩中も“完全に止まる”のではなく、軽くペダルを回す・その場で足踏みをする・軽く歩くなど、血流を止めないようにしましょう。
④ 毎日やらない(週2〜3回でOK)
HIITは効果が大きい反面、ストレスホルモンも強く出るトレーニングです。正しく追い込めていれば、終わった直後はむしろ「吐きそう」「しばらく座りたい」くらいになります。
この状態を毎日やるとオーバーワークになり、逆にホルモンバランスを崩します。
目安としては
- 初心者:週2回
- 慣れてきたら:週3回まで
- 筋トレもしている人:筋トレのない日に入れるか、筋トレ後に短時間だけ入れる
という設計がおすすめです。
Evolve推奨:バイク(エルゴメーター)HIITの具体例
関節の負担を減らしつつ心拍を上げやすいので、Evolveではバイクを使ったHIITを特におすすめしています。やり方は次のとおりです。
- ウォームアップ:3〜5分、軽めにこぐ
- 高強度区間:30〜60秒、ほぼ全力でこぐ
- このとき心拍を80%以上に
- インターバル:高強度の半分の時間(30秒やったなら15秒)で軽くこぐ
- これを5セット
- きつければ最初は3セットからでOK
ポイントは、時間よりも心拍です。
「今日は60秒できた」というよりも「今日はちゃんと80%まで心拍を持っていけたか」を基準にしてください。
HIITで得られる追加のメリット
ここまででも十分ですが、HIITはミトコンドリア以外にも次のようなメリットがデータで報告されています。
- 心肺機能の向上
- 体脂肪の減少・代謝の向上
- 筋力・筋持久力の向上
- インスリン感受性の向上(糖質を使いやすくなる)
- 血圧の改善
- 骨密度の向上
- 自律神経の調整
- 認知機能・短期記憶の改善
- アンチエイジング効果
つまり、30歳を超えたら“とりあえず有酸素”ではなく、“とりあえずHIIT”のほうが効率的ということです。時間も短くて済みますしね。
まとめ
- 30歳以降、ミトコンドリアは何もしないと落ちる
- 落ちると「疲れやすい」「痩せにくい」「トレーニングがしんどい」になる
- 科学的に機能を戻したいならHIITが最も効率的
- ただし「高強度」「2:1または1:2」「完全停止しない」「週2〜3回」の4条件は守る
- バイクHIITなら関節にやさしく続けやすい
- 中長期で続けると、代謝・心肺・脳機能・アンチエイジングまで波及する
30歳を超えたら、“長く続けられる強度で若さを維持する”という考え方が大切です。HIITはそのための最小時間・最大効果の手段になります。次はこれをあなたの週間メニューにどう入れるかを決めていきましょう。
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