ダイエットでよくある相談がこれです。
「食べてないのに落ちません」
「カロリーはマイナスのはずなのに体重が動きません」
結論から言うと、多くの場合は摂取カロリーではなく“消費カロリーのほうを高く見積もっている”ことが原因です。
カロリー制限は「摂取カロリー – 消費カロリー」をマイナスにできれば減量できます。ところが、ここで使っている消費カロリーの数字がズレていると、机上ではマイナスでも現実ではマイナスになっていません。
ではなぜズレるのか。主な理由はつぎの3つです。
- 欧米人向けの式(ハリス・ベネディクト方程式)で計算している
- 運動で消費したカロリーを「盛って」計算している
- 体重が落ちているのに消費カロリーを定期的に更新していない
この3つが揃うと、ほぼ確実に「食べてないのに落ちない人」が完成します。ここから1つずつ分解していきます。
1.自己申告のカロリーはだいたいズレる
まず前提として、人間は自分が食べた量を少なく、自分が動いた量を多く申告する生き物です。
1990年に行われた有名な研究では、食事量と運動量を自己申告してもらったところ、
- 摂取カロリーは 約47%も少なく申告
- 消費カロリーは 約51%も多く申告
していた、という結果が出ています。つまり「食べてないのに」は、けっこうな割合で食べてるのに、の言い間違いです。
だからこそ、カロリー制限をやるなら「なんとなく減らす」ではなく、数字で管理するところから始める必要があります。
2.減量ペースは“週0.7%”がちょうどいい
さらに大事な前提があります。減量は速ければいいわけではないということです。
2011年に行われた、アスリート21名を対象にした有名な研究では、以下の2グループでダイエットをさせました。
- Aグループ:週あたり体重の0.7%を落とすように設定
- Bグループ:週あたり体重の1.4%を落とすように設定
ところが実際に落ちた体重は、どちらも週あたり約1.0%になりました。にもかかわらず、脂肪がよく落ちたのは「ゆっくり」のほうでした。
- ゆっくり(0.7%設定)グループ:体脂肪 −4.9kg
- 速め(1.4%設定)グループ:体脂肪 −3.2kg
そして筋肉に関しても、
- ゆっくり組:筋肉 +1.0kg
- 速め組:筋肉 −0.3kg
という結果。
つまり、「ガッと落とす」は見た目の数字は気持ちいいけれど、脂肪が落ちにくく、筋肉が落ちやすい。なので、週あたり体重の0.7%くらいで落とすのが理想的です。
ここまでをまとめると、ダイエットは
- まず「週0.7%落ちるように」カロリーを決める
- そのために消費カロリーを正しく見積もる
という順番になります。ではいよいよ核心の「消費カロリーをどう見積もるか」です。
3.ハリス・ベネディクト方程式は日本人だと高く出やすい
消費カロリーはふつう、
消費カロリー = 基礎代謝量(BMR) × 生活活動強度(PAL)
で出します。
ここで最初にズレるのが基礎代謝量のほうです。
多くの「ネットで出てくる基礎代謝計算ツール」は、ハリス・ベネディクト方程式という欧米人のデータをもとにした式を使っています。ところが2011年に日本人18〜79歳の男女365人で実測した研究では、
- ハリス・ベネディクト式は、男性で +99kcal
- 女性で +150kcal
ほど高く出る傾向があると報告されています。日本人は欧米人より体格が小さいので、当然といえば当然です。
では何を使えばいいか。日本人にとって精度がよかったのが**ガンプル方程式(Ganpule式)**です。これなら誤差がだいぶ小さくなり、
- 男性:+28kcal程度
- 女性:+10kcal程度
に収まります。つまり、まずはBMRの計算式をガンプル式に変更すること。これが1つ目の修正ポイントです。
※WordPressではコードにせず、「ガンプル方程式 計算」で検索できる旨を書いておくと読者が使いやすいです。
4.生活活動強度(PAL)を盛りすぎている
次にズレるのが**生活活動強度(PAL)**です。ここも「自分はけっこう動いてるし」で高い数字を選びがちですが、ここを盛ると一気に消費カロリーが膨らみます。
よく使われる目安はこの4段階です。
- 1.3(低い)
 買い物など1時間程度の歩行のほかは座位が多い
- 1.5(やや低い)
 通勤・家事などで2時間ほど動くが、仕事は座位が多い
- 1.7(やや高い)
 上記に加えて1日1時間のサイクリングやランニング、または立ち仕事が多い
- 1.9(高い)
 1日1時間以上の高強度トレーニングや肉体労働
ここでの注意点は、実は運動している人ほど「他の時間に動かなくなる」ので、全体としてはそんなに消費が増えていないことです。これを「代償反応」といいます。
5.運動で“燃えたつもり”になっていないか
2022年の研究では、男性を
- 週3回×300kcalの有酸素をするグループ
- 週3回×600kcalの有酸素をするグループ
- 何もしないグループ
に分けて比較しました。理屈でいえば600kcalのほうが痩せるはずです。ところが結果はこうです。
- 中程度(300kcal):体重 −3.6kg、脂肪 −4.0kg
- 高強度(600kcal):体重 −2.7kg、脂肪 −3.8kg
つまりたくさん運動したほうが、かえって痩せ幅が小さかったのです。理由はシンプルで、運動量が大きくなると
- 食欲が上がって食べてしまう
- 日常の細かい動き(NEAT:非運動性熱産生)が下がる
からです。
2017年の大きなデータでも、身体活動量を上げても、あるところから消費カロリーが頭打ちになることがモデル化されています。
つまり「トレーニングしてるから自分はPAL1.7だろう」「仕事で動くから1.9だろう」と考えると、たいてい0.2〜0.4くらい高く見積もっていると思ってください。
ここは**“気持ち低め”に設定するのが正解**です。
6.ダイエットが進むと代謝は必ず落ちる
さらに厄介なのは、一度決めた消費カロリーがそのままでは使えなくなることです。体重が落ちると体を維持するコストが下がるので、消費カロリーも落ちていきます。
たとえば1951年の古い研究では、カロリーを50%カットした状態で半年過ごしたら基礎代謝が40%も低下したという報告があります。この40%のうち、
- 15%は「体が省エネ化したぶん」
- 25%は「体のサイズが小さくなったぶん」
でした。
さらに2012年の研究では、肥満の男女16人が30週間ダイエットしたところ、
- 6週目で −356kcal
- 30週目で −851kcal
も「想定より代謝が落ちていた」と報告されています。ここまで大きく落ちるのは肥満のケースですが、ダイエットが進めば代謝は落ちるという方向性は、どの体型でも同じです。
つまり、最初に出した消費カロリーをずっと使い続けるのはNGです。
「痩せない」となったら、その時点の体重を使ってもう一度『BMR×生活活動強度』をやり直す必要があります。
7.週ごとに“落ち具合”を見てカロリーを調整する
ここまで理解できたら、最後は運用ルールです。やることはシンプルで、
- 1週間ごとの平均体重を出す
- 「先週比で−0.7%になっているか」を見る
- なっていなければ摂取カロリーを100〜150kcal下げる
- 逆に落ちすぎ(−1.0%以上)なら50〜100kcal戻す
というだけです。
ただし、体重は毎週きれいに落ちるわけではありません。1週間まったく落ちず、次の週に1kgストンと落ちることも普通にあります。なので、2〜3週間の平均で見て0.7%前後になっていればOKです。
著者(動画の内容)もスプレッドシートでこれを自動化していると言っていましたね。面倒な人は「摂取カロリー・体重・落としたい割合」を入れたら自動で次週のカロリーを出すようなシートを作ると、かなりラクになります。
8.今日からやるべきことまとめ
ここまでを整理すると、カロリー制限が失敗する典型パターンはこうです。
- 欧米人向けのBMR式を使っていて、そもそもBMRが高い
- 「運動してるから」と思ってPALを高くしすぎ
- その状態で「−500kcalしてるつもり」になっている
- 体重が落ちてきても消費カロリーを更新していない
なので今日からはこうしてください。
- 基礎代謝はガンプル方程式を使う(日本人向け)
- 生活活動強度は1段階低めを選ぶ
- 週平均体重で“0.7%落ちているか”を確認する
- 止まったら100〜150kcal下げる
- 3週連続で動かなかったら、もう一度BMRから全部計算し直す
これで「食べてないのに痩せない」はほぼ消えます。
7.Evolveなら「報告するだけ」でこの計算を代行できます
ここまで読んで「なるほど、だけどこれ毎週やるのめんどくない?」と思った人がほとんどだと思います。そう、めんどくさいんです。だから多くの人は一番大事な調整のところをサボって失敗するんです。
そこでEvolveの出番です。
Evolveでは、毎日「体重」と「その日の摂取カロリー(ざっくりでもOK)」を報告してもらうだけで、こちら側で
- 現在の推定消費カロリー
- 今の落ち幅に合わせた“今日からの摂取カロリー”
を設定し直すことができます。
つまり、
- 「自分の生活活動強度はどれ?」と悩まなくていい
- 「何kcalで止めればいいか」も自分で探さなくていい
- 停滞したらこちらから「今週は−100kcalでいきましょう」と言える
という形にできます。
カロリー制限が失敗する3大理由のうち、②運動の過大評価と③定期的に更新していないを、まるごとこちらで潰せるので、成功率が一気に上がります。
まとめ
- カロリー制限が失敗する最大の理由は消費カロリーの見積もりミス
- 日本人はガンプル方程式+低めのPALで始めるとズレが小さい
- 減量ペースは週0.7%前後が筋肉を守りながら脂肪を落とせる
- ダイエットが進めば代謝は必ず落ちるので、数週間ごとに設定を更新すること
- 面倒ならスプレッドシートなどで自動化してしまうのが最強
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