「炭水化物は太るから減らした方がいい」。
こういったフレーズは、ダイエットやボディメイクの世界ではおなじみです。
しかし、実際には炭水化物は
・筋トレのエネルギー源
・脳や神経の主な燃料
・ホルモンや代謝を安定させる調整役
という、とても重要な役割を持っています。
つまり、炭水化物をただ悪者扱いしてしまうと、筋肉もパフォーマンスももったいないことになります。そこで本記事では、炭水化物の種類や仕組み、筋トレ・ダイエットへの影響を、できるだけ理論的かつ分かりやすく解説していきます。
炭水化物とは何か?基本の整理
まず、炭水化物は「エネルギー源になる糖質」と「ほとんどエネルギーにならない食物繊維」のセットだと考えると分かりやすくなります。
エネルギーとしての炭水化物
・1gあたり約4kcal
・主な役割は「エネルギー供給」
・特に中〜高強度の運動や、脳・神経の活動に使われる
体内では、炭水化物から分解された「ブドウ糖(グルコース)」が主役です。このグルコースは血液中にあるときは「血糖」と呼ばれます。肝臓や筋肉に貯蔵されると「グリコーゲン」という形になります。
炭水化物の種類:単糖・二糖・多糖・食物繊維
次に、炭水化物の種類を少しだけ細かく見ていきます。
化学的な分類
・単糖類
例:ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)
・二糖類
例:ショ糖(砂糖)、乳糖(牛乳の糖)
・多糖類
例:デンプン(米、パン、麺、芋)、グリコーゲン(動物の貯蔵糖)、
そして一部の食物繊維
このうち、主にエネルギー源になるのが「糖質(単糖〜デンプンなど)」であり、逆にエネルギーになりにくいのが「食物繊維」です。
糖質と食物繊維の違い
・糖質
→ 消化されてブドウ糖などになり、血糖としてエネルギーに使われる
・食物繊維
→ 消化されにくく、そのまま大腸まで届く
→ 腸内細菌のエサになり、便通や腸内環境に関わる
つまり、炭水化物=「糖質+食物繊維」というイメージです。
精製度とGI:炭水化物の“質”の違い
さらに、炭水化物は「精製されているかどうか」「血糖の上がりやすさ(GI)」でも性質が変わります。
精製度の違い
・精製度が高い
白米、食パン、砂糖、お菓子など
→ 食物繊維が少なく、消化吸収が速い
・未精製・全粒
玄米、オートミール、全粒粉パン、芋類、豆類など
→ 食物繊維やビタミン・ミネラルが多く、消化が比較的ゆっくり
GI(グリセミック指数)とは?
GIは「どれくらい血糖を早く・高く上げるか」を数値化した指標です。
・高GI:血糖が急上昇しやすい
・低GI:ゆるやかに上昇しやすい
ただし、GIが高いから即NGというわけではなく、
・総カロリー
・炭水化物の量
・他の栄養素(タンパク質や脂質、食物繊維)との組み合わせ
によって、血糖の上がり方や満腹感は変わります。
炭水化物の消化・吸収とインスリンの仕組み
ここからは、少し生理学寄りの話です。しかし、これが分かると「インスリン悪者論」から解放されます。
- 食事で摂ったデンプンや糖は、口〜小腸で分解されて最終的に単糖(主にブドウ糖)になる
- ブドウ糖が小腸から吸収されると、血糖値が上昇する
- すると膵臓から「インスリン」が分泌される
- インスリンの働きで
・血液中の糖が筋肉・肝臓へ取り込まれ、グリコーゲンとして蓄えられる
・必要以上に余った分は、長期的には体脂肪として蓄えられる
ポイントは、インスリンは「太るホルモン」ではなく、本来は「血糖を安定させて、栄養を細胞に運ぶための案内役」だということです。
総カロリーがオーバーしていれば太るし、足りなければ痩せる。
炭水化物だけが単独で太らせているわけではありません。
筋トレにおける炭水化物の役割
ここからが、トレーニーにとって一番おいしい部分です。
高強度トレーニングのメイン燃料
筋トレやHIITのような高強度運動では、脂質よりも炭水化物が優先的に使われます。理由としては、
・高強度になるほど、素早くエネルギーを供給できる燃料が必要
・糖質は分解スピードが速く、クイックにATP(エネルギー通貨)を作れる
という特徴があるからです。
脂質は「ゆっくり長く燃えるロングラン向けの燃料」、炭水化物は「瞬発力と高出力を出す燃料」とイメージすると分かりやすいです。
筋グリコーゲンの消耗とパフォーマンス
筋トレを1セッションしっかり行うと、筋肉のグリコーゲンは大体25〜40%ほど減ると言われています。特に、
・セット数が多い
・休憩が短い
・全身種目が多い
こういったメニューではグリコーゲンの消耗が大きくなります。
その結果、
・レップ数が伸びない
・途中でバテる
・総トレーニングボリュームが下がる
という状態になりやすくなります。
つまり、炭水化物が極端に足りない状態では、筋トレの「質」を維持しにくくなります。また、長期的な筋肥大にも不利になりかねません。
トレ後の炭水化物と回復
トレーニング後に炭水化物を摂ると、
・減ったグリコーゲンの回復が早くなる
・プロテイン(アミノ酸)と一緒に摂ることで、筋肉内への栄養補給がスムーズになる
・次のトレーニングでも高いパフォーマンスを出しやすい
といったメリットがあります。
したがって、筋トレを高頻度で行う人ほど、トレーニング周り(トレ前〜トレ後)の炭水化物摂取がパフォーマンスに直結しやすくなります。
ダイエットと炭水化物:ローカーボ vs ローファットを整理
ここからは、みんな気になる「炭水化物と体脂肪」の話です。
何よりも優先されるのはエネルギー収支
体脂肪が減るかどうかを決めているのは、結局のところ
・消費カロリー > 摂取カロリー
この状態がどれくらい続くかです。
つまり、
・低糖質
・低脂質
・地中海食
・バランス食
どんな食事パターンであっても、「長期的にカロリーがマイナスなら痩せる」というのが基本です。
低糖質ダイエットの特徴
・炭水化物を大きく減らすことで、短期的には体重がガクッと落ちやすい
・ただし、そのかなりの部分は「グリコーゲンと体内水分」が減った影響も大きい
・長期的には、カロリーが同じであれば「脂肪の減り方」は低脂質ダイエットとそこまで変わらないという結果も多い
とはいえ、
・糖質を減らすと食欲が落ち着くタイプ
・甘いもののドカ食いがやめられないタイプ
このような人にとっては、ローカーボは「続けやすくてカロリーを落としやすい」手段になる場合もあります。
インスリン悪者論への反論
「炭水化物 → インスリン上昇 → 脂肪が増える → だから太る」
このロジックは、一見もっともらしく聞こえます。
しかし、実際には
・インスリンは、脂肪だけでなく筋肉にも栄養を運ぶ
・インスリンが出ていても、1日のトータルでカロリーがマイナスなら脂肪は減る
・炭水化物の割合が違っても、総カロリーとタンパク質が同じなら脂肪の減り方はほぼ同じ
という研究が多く、インスリンだけを悪者にするのはシンプルすぎる解釈です。
炭水化物がもたらすその他の身体への影響
体重の増減・むくみ
炭水化物は、グリコーゲンとして体内に貯蔵されるときに水分も一緒に抱え込みます。一般的には、
・グリコーゲン1gに対して、水分が約3g程度くっつく
と言われています。そのため、
・増量期やチートデイで炭水化物を増やすと、数日で体重が1〜3kg増えることがある
・逆に、糖質制限を始めると数日で体重がストンと落ちる
なお、こういった変化の多くは「水とグリコーゲンの出入り」であり、「脂肪が一気に増減した」わけではない、という点は押さえておきたいポイントです。
食欲・満腹感への影響
さらに、炭水化物の“質”は食欲にも影響します。
・砂糖や白パン、菓子パンなど
→ 血糖が急上昇し、その後急降下しやすい
→ 人によっては、眠気や強い空腹感を感じやすくなる
・玄米、オートミール、芋、豆類など食物繊維が多い炭水化物
→ 胃の中で膨らみ、消化がゆっくり
→ 満腹感が長く続きやすく、ダイエット向き
つまり、ダイエット中は「炭水化物をゼロにする」よりも
「精製度の低い、食物繊維の多い炭水化物に切り替える」方が、現実的かつ続けやすい戦略になります。
腸内環境と短鎖脂肪酸
オートミールや豆類、果物、野菜などに含まれる水溶性食物繊維や、冷ましたご飯・芋に増える「レジスタントスターチ」は、腸内細菌のエサになります。
これらが分解されると「短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)」が産生され、
・腸粘膜のエネルギー源
・炎症のコントロール
・インスリン感受性の改善
などに関わる可能性が報告されています。
したがって、理想的には「糖質の量」だけでなく、「食物繊維の量」も意識したいところです。
筋トレ&ダイエット中の炭水化物の実務的な摂り方
最後に、実際の食事設計でどう考えるかをまとめます。ここではあくまで目安として考えてください。
筋肥大・高ボリューム期
・体重1kgあたり 3〜6g/日 の炭水化物
・筋トレのボリュームが多い人ほど、やや高めに設定
・トレーニング前後に炭水化物をしっかり入れて、パフォーマンスと回復を優先
例)体重70kgの場合
→ 炭水化物 210〜420g/日 が目安レンジ
減量期(ダイエット)
まずは順番として、
- 減量用の総カロリーを決める
- 体重1kgあたり約1.6〜2.2gのタンパク質を確保する
- 残りのカロリーを「脂質」と「炭水化物」で配分する
という流れで考えるとスムーズです。
そして、
・筋トレの強度が極端に落ちるほど炭水化物を削りすぎない
・できるだけ玄米、オートミール、芋、果物、豆類など「質の良い炭水化物」を中心にする
・トレ前後にはある程度の炭水化物を残しておく
こういった工夫をしてあげると、筋肉を守りながら体脂肪を落としやすくなります。
まとめ:炭水化物を「敵」ではなく「味方」にする
ここまで整理してきたように、炭水化物は
・筋トレの出力と回復を支える主な燃料
・脳や神経のエネルギー
・ホルモンバランスや腸内環境にも関わる重要な栄養素
です。
つまり、本当に大事なのは「炭水化物をゼロにすること」ではなく、
・総カロリーのコントロール
・タンパク質の確保
・炭水化物の“質”を上げる(精製度の低いもの、食物繊維の多いもの)
・トレーニングの前後にうまく配置する
といった、全体設計です。
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