HMBという名前は、筋トレ界隈で一度は聞いたことがあるかもしれません。
「飲むだけで筋肉がつく」「減量中の筋肉減少を防げる」など、かなり夢のある言葉で紹介されることも多いです。
しかし、実際の研究をよく見ると、**HMBは“攻撃力アップ”というより、どちらかというと“防御バフ寄りのサプリ”**という位置づけが現実的です。
そこで本記事では、HMBの仕組みやエビデンス、そして筋トレ・ダイエット中にどこまで期待して良いのかを整理して解説していきます。
HMBとは何者か?ロイシンから生まれる代謝産物
まずHMBの正体から整理しましょう。
- 正式名称:β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate)
- 必須アミノ酸ロイシンが体内で代謝される途中でできる物質
- サプリとしては主に
- Ca-HMB(カルシウム塩)
- HMB-FA(遊離酸型)
の2種類が使われます。
一般的な摂取量は1日3g前後とされ、1g×3回に分けるパターンや3gをまとめて飲むパターンが使われることが多いです。
つまりHMBは、ロイシンに関連した**「筋肉まわりの代謝に関わるサプリ」**だとイメージすると分かりやすいです。
HMBが働く3つのメカニズム
次に、HMBが「どう効くことになっているのか」を3つのポイントで見ていきます。
① 筋タンパク合成を少し押し上げる可能性
まず1つ目は、筋タンパク合成(筋肉をつくる方向)への刺激です。
- ロイシン同様、HMBも
mTOR(エムトール)経路やPI3K/Akt経路といった筋タンパク合成シグナルを刺激する可能性が示されています。 - その結果として、筋肉をつくるスピードをわずかに高めるかもしれない、とされています。
ただし、ここで重要なのは、ロイシンそのものほど強いスイッチではなさそうだという点です。
つまり「合成ブーストはあるとしても、そこまで劇的ではない」と考えられています。
② 筋分解を抑える“防御バフ”としての働き
2つ目のポイントは、筋タンパク分解(筋肉が減る方向)を抑える働きです。
- 筋分解の中心にある
ユビキチン–プロテアソーム系やオートファジーといった経路をHMBが弱める可能性が示されています。 - がんやステロイド使用など、筋萎縮が起きやすい条件で、HMBが筋肉の減少を緩やかにするという報告もあります。
つまり、
「筋肉を増やす」というより、
「筋肉が削られるのを少し守る」方向のサプリ
という性格が強いと考えられます。
③ 筋損傷を軽減し、回復を助ける可能性
3つ目は筋損傷と回復への影響です。
- HMBは、筋細胞膜の材料として重要なコレステロール合成にも関わるとされます。
- そのため、ハードなトレーニングによって傷ついた筋細胞膜の修復を助け、
CK(クレアチンキナーゼ)などの筋損傷マーカーの上昇を抑えるという報告もあります。
したがって、「筋肉痛そのものがゼロになる」というほどではないにしても、オーバーワーク時のダメージをやや軽くする役割が期待されています。
筋トレ×HMB:若いトレーニーでのエビデンス
では、実際に筋トレをしている若い成人がHMBを飲むとどうなるのでしょうか。
ここが一番気になるところだと思います。
良さそうに見える研究もあるが…
いくつかの研究では、
- トレーニング初心者にHMBを飲ませると、
全身や脚の筋力がわずかに上がったという結果や - HMB-FA(遊離酸型)を用いて、
12週間のハードな筋トレで筋肥大・筋力・パワーがプラセボより大きかった
といったポジティブなデータも報告されています。
そのため、HMBが話題になり始めた頃は、
「かなり有望なサプリ」として持ち上げられました。
しかしメタ分析で見えてきた現実
ところが、その後に複数の研究をまとめたメタ分析が出てきたことで、評価はだいぶ落ち着いてきました。
- 若い健康な成人を対象にしたレビューでは、
HMBは体重にごく小さな変化を与える程度で、除脂肪体重(筋肉量)や筋力への明確なプラス効果はほとんど確認できないという結果が多いです。 - トレーニング経験者やアスリートに限ると、
プラセボとの差がほぼ見られない、あるいは「研究間で結果がバラバラ」という報告が増えています。
つまり、
しっかり筋トレをして、十分なタンパク質を摂っている若いトレーニーでは、
HMBの筋肥大・筋力アップ効果はかなり小さい、もしくはほとんど誤差レベル
と考えておく方が現実的です。
高齢者・サルコペニア・病気など「筋萎縮リスクが高い人」では?
一方で、対象が高齢者やサルコペニア(加齢性筋萎縮)、さらには病気で筋肉が落ちやすい人に変わると、話が変わってきます。
- 高齢者を対象にした研究やメタ分析では、
レジスタンストレーニングとHMBを組み合わせることで、
筋肉量・筋力・歩行速度などの身体機能がプラセボより改善する可能性が報告されています。 - また、病気や長期臥床、がんなどで筋萎縮リスクが高い状況では、
HMBが筋肉の減少を少し食い止める方向に働くかもしれない、と考えられています。
そのため最近の国際的な見解では、
- 若いトレーニーに対してはエビデンスが弱い
- しかし、高齢者や筋萎縮リスクが高い人では「意味があるかもしれない」
という、少しハッキリした線引きがされつつあります。
ダイエット中のHMB:脂肪燃焼ではなく「筋肉の保険」
次に、ダイエットとの関係を見ていきましょう。
まず前提として、HMB自体に「脂肪燃焼効果」があるわけではありません。
脂肪は、あくまで消費カロリー > 摂取カロリーというエネルギーバランスで落ちます。
ただし、減量中は
- カロリー制限
- トレーニングボリュームの増加
- ストレスや睡眠不足
などが重なることで、筋肉が分解されやすい状態になります。
ここでHMBは、
- 筋分解のシグナルを弱める
- 筋損傷からの回復を助ける
といった作用から、**「筋肉を少し守る保険」**として働く可能性があります。
実際、いくつかの研究では
- 厳しい減量条件下で筋肉の減少がわずかに抑えられた
- 筋損傷マーカーの増加が抑えられた
といった結果も報告されています。
とはいえ、メタ分析レベルで見ると、
「体脂肪が劇的に落ちる」といった効果は認められていません。
つまり、HMBは**“脂肪を落とすサプリ”ではなく、
減量中の筋肉を少し守るかもしれないサプリ**
と理解しておくのが妥当です。
その他の身体への影響:血中脂質・ホルモンなど
さらに、HMBは筋肉以外への影響も調べられています。
血中脂質(コレステロールや中性脂肪)
- 総コレステロール
- 中性脂肪
- LDL・HDLコレステロール
といった指標に対して、HMBが有意な改善をもたらさなかったという報告が多く、
「コレステロールを下げるサプリ」として期待するのは難しそうです。
ホルモン(テストステロン・コルチゾール)
- 一部のアスリート研究では、HMBがコルチゾール(ストレスホルモン)をわずかに下げる可能性が示唆されています。
- しかし、効果量は小さく、すべての研究で一貫しているわけではありません。
したがって、
テストステロン爆上げサプリ
コルチゾール激減サプリ
といったイメージは誇張であり、ホルモン調整の主役として期待するのは現実的ではないと言えます。
研究の信憑性:なぜ誇張されがちなのか?
ここまで読むと、「HMBって思ったより地味だな…」と感じるかもしれません。
その背景には、研究の構造やバイアスも関係しています。
- 劇的な効果を報告している研究の中には、
サプリメーカーなど産業界から資金提供を受けているものも多い - 被験者数が少ない、統計処理が甘い研究も混ざっている
- そこで、質の高い研究だけを集めてメタ分析すると、
効果がかなり小さく見積もられる
このような事情から、最新のレビューでは
若い健康なトレーニーに対してHMBをおすすめする強い根拠はない
という結論が多くなっています。
実務的な優先順位:HMBはどの位置にくるか?
では、実際のボディメイクに落とし込むと、HMBはどんな位置づけになるでしょうか。
若いトレーニー・ダイエット中の人の場合
まず、優先するべきは明らかにこちらです。
- 総タンパク質:体重1kgあたり1.6〜2.2g
- プログレッシブな筋トレ(扱う重量・ボリュームを少しずつ増やす)
- 睡眠・ストレス管理・回復
- そのうえで、クレアチンやカフェインなどエビデンスの強いサプリ
この土台ができていない状態でHMBだけ足しても、正直ほとんど意味がありません。
そのためHMBは、
- 減量がかなりハード
- トレーニングボリュームも高い
- 少しでも筋肉を守りたい
- そしてサプリにある程度予算的余裕がある
こういったニッチな状況で、「最後に足すオプション」くらいの優先順位と考えると良いです。
高齢者や筋萎縮リスクが高い人の場合
一方で、高齢者や病気を抱える方では、
- レジスタンストレーニング
- 十分なタンパク質
- そしてHMB(1日3g程度)
を組み合わせることで、筋肉量・筋力・歩行機能が改善する可能性が示されています。
ただし、この領域は
- 持病
- 服薬
- 全身状態
との兼ね合いが非常に重要です。
したがって、自己判断ではなく、医師や管理栄養士と相談したうえでの利用が前提となります。
用量と安全性
最後に、実際に使う場合の目安も整理しておきます。
- 一般的な用量:1日3g
- 飲み方:1g×3回に分けるか、3gをまとめて1回飲むかが主流
- 研究では、12週間以上の継続でも
- 肝機能
- 腎機能
- 血液検査
に有害な変化はほとんど報告されておらず、安全性は比較的高いサプリと考えられています。
とはいえ、
- すでに腎疾患・肝疾患がある
- 妊娠・授乳中である
といった場合には、必ず医師に相談してからにしましょう。
まとめ:HMBに「夢を見すぎない」使い方が大事
ここまでの内容をシンプルにまとめると、HMBはこんなサプリです。
- 攻撃力アップより“防御バフ寄り”
- 若い健康なトレーニーでは、筋肥大・筋力アップの上乗せ効果はかなり小さい
- 高齢者や筋萎縮リスクが高い人では、筋量・筋力・機能の維持に役立つ可能性がある
- ダイエット中は、脂肪燃焼ではなく筋肉減少を少し守る保険的な役割
- ただし、優先順位はあくまで
「食事・トレーニング・睡眠・クレアチン>>HMB」
サプリはあくまで「+α」です。
まずは食事とトレーニングの土台を固めることが、筋トレやダイエットで身体を変える一番の近道です。
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