スタティックストレッチは、いわゆる「準備体操でやる、反動をつけずに伸ばすストレッチ」です。では、筋トレをしないでストレッチだけを続けたら、筋力や筋肥大(筋肉が大きくなること)はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、条件さえ満たせば、スタティックストレッチだけでも筋力・筋肥大は「小さく」伸びます。しかし一方で、筋トレ直前に長く伸ばすと筋力が落ちる可能性もあります。つまり、やり方を間違えるとプラスにもマイナスにも振れます。
この記事で分かること
- スタティックストレッチだけで筋力・筋肥大が起きる条件
- 筋トレ直前にやると筋力が落ちやすい「時間の目安」
- セット間ストレッチ(インターセットストレッチ)の使い方
- 筋トレ後ストレッチが回復や筋肉痛に効かないと言われる理由
- 柔軟性を伸ばすための最小有効量(やりすぎのムダを減らす)
- 伸ばす優先部位と、実践しやすい方法
スタティックストレッチだけで筋力・筋肥大は伸びるのか
2024年9月に、オーストリアのグラーツ大学のメタ分析として、合計42の研究(対象1318名)をまとめた解析が報告されています。そこで「スタティックストレッチのみ」を行った場合の筋力・筋肥大が検討されました。
筋力:ストレッチだけでも上がる(ただし小さめ)
まず筋力は、スタティックストレッチのみでも向上が確認されています。効果量は0.3で、小さな効果です。とはいえ、重要なのはここからで、筋力向上はストレッチ時間に大きく依存していました。
- 1つの筋肉に対して、1回15分以上の長時間ストレッチ:筋力が有意に向上
- 1回15分未満:有意な改善は出にくい
- さらに、継続期間も重要で、6週間以上の継続で効果が出やすい
- 6週間未満:効果が出にくい
したがって、筋力目的なら「1筋肉あたり15分以上を、6週間以上継続」が最低条件、という整理になります。
筋肥大:全体では小さいが、条件を揃えると確認される
次に筋肥大(筋肉量の増加)についても、全体としては効果量0.2という小さな効果が報告されています。しかしこちらも、時間と頻度に強く依存します。
- 1つの筋肉に15分以上
- それを毎日
- 6週間以上継続
つまり、「長時間×高頻度×継続」が揃ってはじめて、ストレッチだけの筋肥大が見えやすくなる、ということです。
なぜストレッチだけで筋肥大が起きる可能性があるのか
ここで疑問になるのが、「なぜ伸ばすだけで筋肉が増えるのか」です。研究者の説明としては、主に次の2点が提案されています。
- 長時間の受動的張力が続くことで、筋タンパク合成が高まる可能性
- 筋肉が長く伸ばされた状態が続くことで、筋節(サルコメア)が増える可能性があり、それが肥大に繋がりうる
さらに、動物研究では24時間の固定ストレッチによって、最大で319%の筋肥大率向上が確認された例があるとされ、時間依存的に肥大が起きうることが示唆されています。とはいえ、これは動物研究の話なので、そのまま人に当てはめるのは注意が必要です。しかし、時間がカギであること自体は一貫しています。
筋トレとの比較:置き換えは基本おすすめしない
同じ解析では、1回あたり10〜15分の筋トレと、スタティックストレッチの筋肥大効果を比較する分析も紹介されています。結果としては、個人差はあるものの、60〜120分のスタティックストレッチによって、1回10〜15分の筋トレに相当する筋肥大効果を得られる可能性が示されました。
しかし当然ながら、効率は筋トレが圧倒的に上です。だからこそ、筋トレの時間を削ってまでストレッチに置き換えることは推奨されにくい、という結論になります。
筋トレ直前のスタティックストレッチは筋力を落とすのか
次に、現場で超重要なテーマです。筋トレ前にスタティックストレッチを入れる人は多いですが、時間が長いと筋力が落ちる可能性があります。
2024年にグラーツ大学から発表された別のメタ分析では、83研究(対象2012名)をまとめ、筋トレ前にスタティックストレッチを行うことで筋力低下が起きるかを検証しています。
- 1つの筋肉に60秒以上ストレッチをかけた後:筋力低下が有意に起きる(効果量-0.84)
- 一方で、30秒以下:筋力低下は起こりにくい
つまり、筋トレ直前に長く伸ばすほど神経の興奮が抑えられやすく、力が出にくくなる可能性がある、という整理です。したがって、筋トレ前に入れるなら「短く」が基本になります。
セット間の短時間ストレッチ(インターセットストレッチ)はアリか
一方で、セット間休憩中に短いストレッチを入れる「インターセットストレッチ」には、悪影響が出ないだけでなく、メリットの可能性も報告されています。
2022年にリーマン大学からのレビューとして、インターセットストレッチが筋肥大適応を高める可能性が示されています。ポイントは時間です。長くやらず、短く、狙って入れます。
- 目安は20秒前後(長くても30秒以下)
- 強度は「痛い」ではなく「痛気持ちいい」
- セット間の短時間でも機械的張力が追加刺激になりうる
- 筋タンパク合成のスイッチに関わるmTORシグナル伝達の活性化に役立つ可能性
- 特に体が硬い人ほど、反応が出やすい可能性
ただし、伸ばしすぎると逆効果になりうるため、「30秒を超えない」をルールとして守るのが現実的です。つまり、セット間は“少しだけ足す”が正解です。
筋トレ後のストレッチは筋肉痛・回復・ケガ予防に効くのか
よく「クールダウンでストレッチすると筋肉痛が減る」「回復が早くなる」「ケガを防げる」と言われます。しかし、ここは期待が先行しやすいポイントです。
筋肉痛と回復:効果はほぼゼロという整理
2025年に発表されたメタ分析では、運動後のストレッチが回復をどの程度促進するかが検証され、15のデータ(健康な被験者465名)を分析した結果として、次が提案されています。
- 筋肉痛を予防する効果:0
- 痛みを軽減する効果:0
- 筋肉の回復を促進する効果:ない
つまり、筋トレ後のストレッチを「回復目的」で積極的にやる意味は薄い、という結論になります。
ケガ予防:効果はほとんどないとされる
また2025年にフリードリヒ・シラー大学からの最新の報告として、スタティックストレッチによるケガ予防効果もほとんどないことが示唆されています。したがって、予防や回復のためにストレッチを“義務化”するより、別の要素(負荷設定・フォーム・疲労管理)にリソースを回すほうが合理的になりやすいです。
結局どう使うのが正解か:目的別の最適解
ここまでの情報をまとめると、スタティックストレッチは「万能」ではありません。しかし一方で、「条件さえ揃えれば強い武器」になります。だからこそ、目的別に最適化します。
筋力・筋肥大を狙う場合(ストレッチ単独で狙う条件)
- 1筋肉あたり15分以上
- 毎日
- 6週間以上継続
そして、効果は容量依存的(長いほど増えやすい)とされます。とはいえ、筋トレの効率には勝てないため、筋トレを削って置き換えるのは推奨されにくい、という立場になります。
筋トレ前に入れる場合(パフォーマンスを落としたくない)
- 1筋肉あたり30秒以下に抑える
- 60秒以上は筋力低下のリスクが高まる
つまり、直前に長く伸ばすのは避ける、が基本です。
セット間に入れる場合(追加刺激として)
- 20秒前後、長くても30秒以下
- 痛気持ちいい範囲で、伸ばしすぎない
さらに、体が硬い人ほどメリットが出る可能性がある、という整理です。
回復・筋肉痛・ケガ予防目的の場合
筋トレ後のストレッチで、筋肉痛軽減や回復促進、ケガ予防が明確に得られる、という整理にはなりにくいです。したがって、この目的で「頑張って長くやる」優先度は高くありません。
柔軟性を伸ばすなら:最小有効量(やりすぎを減らす)
柔軟性向上は、筋力・筋肥大とは別の“効率のルール”があるとされます。2025年に南オーストラリア大学が、スタティックストレッチの柔軟性向上効果を詳細に分析した報告では、次が提案されています。
- 1回あたり:1筋肉4分で最大効果が出やすく、4分以降の追加効果は出にくい
- 週あたり:合計約10分で頭打ちになりやすい
つまり、柔軟性目的なら「長くやればやるほど伸びる」ではなく、効率よく必要量を積むのが合理的です。具体的には、次が目安になります。
- 週5日なら:1筋肉あたり2分
- 毎日なら:1筋肉あたり90秒
伸ばす優先部位:硬くなりやすく、見た目にも影響しやすい筋肉
伸ばす筋肉のおすすめとして、硬くなりやすい上にケガリスクや見た目の変化にも関わりやすい部位が挙げられています。まずは次の4つを優先すると、効率が良くなります。
- 肩の後ろ側(肩後方の筋群)
- 三角筋後部(肩の後ろ)
- 大臀筋(お尻)
- 大胸筋(胸)
肩の後ろ側(肩後方の筋群)のストレッチ
肩の後ろ側は「肩を後ろに反らす」「内側に閉じる」「内旋(内側へ回す)」方向に関わるため、その逆方向の動きを作ることで伸ばしやすくなります。
- 伸ばす腕は力を抜く
- 反対の腕で外側へ牽引するイメージで、じわっと伸ばす
- 反動は使わず、一定の強度でキープする
三角筋後部:クロスボディアームストレッチ
三角筋後部は、座り作業や日常生活で短く硬くなりやすい筋肉です。したがって、丁寧に伸ばす価値が高い部位です。
- 腕を体の前でクロスさせる
- 体をひねるのではなく、肩関節を内側に「閉じる」意識で伸ばす
- 痛気持ちいい範囲でキープする
大臀筋:4の字ストレッチ
大臀筋は大きな筋肉で、横になっている時間が長いと圧迫されて硬くなりやすい、とも言われます。そこで、4の字ストレッチが実践しやすい方法として挙げられています。
- 反動はつけない
- 常に心地よい痛みの範囲で、一定の強度を保つ
- 呼吸を止めずに続ける
大胸筋:長いストレッチポールを使った「乗るだけ」ストレッチ
大胸筋は、猫背・巻き肩が進むほど短縮しやすく、見た目にも影響が出やすい部位です。さらに姿勢の変化は加齢とともに起こりやすいとされ、2021年のバーミンガム大学の研究では、18歳以上7638名の分析で、胸椎の後弯角(正常範囲20〜40°)が30代後半から増え、60歳以上では全体の75%が40°以上になることが示された、という紹介があります。
また2022年の京都大学大学院のデータとして、日本人2193名を対象に加齢による胸椎後弯の増加が確認され、姿勢の重症化が死亡確率や要介護認定リスクに関わる可能性が示唆された、という話も挙げられています。つまり、胸を伸ばすことは見た目だけでなく、将来の健康の観点でも価値がある、という流れです。
実践はシンプルで、背骨のラインに沿う長いストレッチポールに乗り、腕を広げるだけです。ポイントは2つです。
- ポイント1:肩の角度で狙いを変える
- 脇を約90°開く:大胸筋全体を伸ばしやすい
- 脇を約30°:上部(鎖骨寄り)を狙いやすい
- 脇を約120°:下部寄りを狙いやすい
- ポイント2:肘は伸ばし切らない
- 肩を開いた状態で肘を完全に伸ばすと、血管や神経が引っ張られてしびれが出る可能性がある
- 肘を軽く曲げたまま、痛みなく心地よく伸ばす
また、手のひらを天井に向けると外旋が入りやすく、より伸びやすくなる、という説明もあります。とはいえ、しびれや違和感が出る場合は無理をしないでください。
今日から使える実践テンプレ(目的別)
筋力・筋肥大を狙う「ストレッチ単独」テンプレ
- 対象:伸ばしたい筋肉を1つ選ぶ(例:大胸筋)
- 時間:1回15分以上
- 頻度:毎日
- 期間:6週間以上
- おすすめタイミング:夜(寝る前)
筋トレ直前に長く伸ばすと筋力低下のリスクがあるため、同じ長時間をやるなら夜が合理的、という整理です。
柔軟性を伸ばす「最小有効量」テンプレ
- 1回あたり:1筋肉4分までを目安(それ以降は追加効果が出にくい)
- 週あたり:合計10分で頭打ちになりやすい
- 例:週5日なら2分、毎日なら90秒でもOK
筋トレのセット間に入れる「インターセット」テンプレ
- 時間:20秒前後(長くても30秒以下)
- 強度:痛気持ちいい範囲
- 狙い:追加の機械刺激として“少し足す”
注意点:やり方を間違えると逆効果になりやすいポイント
- 筋トレ直前に1筋肉60秒以上のスタティックストレッチは、筋力低下のリスクが高い
- セット間ストレッチは短く(20秒前後、長くても30秒以下)
- 痛みやしびれが出る強度は避ける(特に大胸筋ストレッチで肘を伸ばし切らない)
- 筋トレ後ストレッチは、筋肉痛軽減や回復促進、ケガ予防目的では効果が期待しにくい
まとめ
- スタティックストレッチだけでも筋力は上がりうる(効果量0.3)
- ただし、筋力目的は「1筋肉15分以上×6週間以上」が最低条件
- 筋肥大も小さいが起こりうる(効果量0.2)。条件は「1筋肉15分以上×毎日×6週間以上」
- 筋トレ直前の60秒以上は筋力低下のリスク(効果量-0.84)。一方で30秒以下なら影響が出にくい
- セット間の20秒前後ストレッチは、追加刺激になる可能性がある(ただし伸ばしすぎはNG)
- 筋トレ後ストレッチは、筋肉痛や回復、ケガ予防の効果は期待しにくい
- 柔軟性は「1回4分」「週10分」で頭打ちになりやすく、週5日2分 or 毎日90秒でも狙える
つまり、スタティックストレッチは「何となく」やるより、目的と時間を決めて使うほど効果が出ます。そして、筋トレの成果を落とさないためにも、直前は短く、長時間は夜に回す、という設計が現実的です。
可動域や姿勢、狙う筋肉の選び方まで含めて最短で整えたい場合は、パーソナルでフォームとプログラムを一緒に最適化していきましょう。
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