まず最初に結論からお伝えします。
DHA・EPAは「飲むだけで痩せる・筋肉が増える魔法のサプリ」ではありません。とはいえ、筋トレやダイエットの効果をじわっと底上げしてくれる**“潤滑油”のような役割**は期待できます。
具体的には、筋トレに対しては筋力や機能の維持・向上、回復サポートに。ダイエットに対しては炎症や代謝の改善、腹部脂肪へのわずかなプラスが報告されています。
しかし、あくまで主役は「トレーニング内容」と「カロリー収支」です。DHA・EPAは、その外側を整える脇役として使うのが現実的です。
ここから、筋トレ・ダイエット・DHA/EPAの関係をエビデンスベースで整理していきます。
DHA・EPAとは?筋トレ・ダイエットとどう関わるのか
まず、DHA・EPAは青魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸です。
そして、これらは単なる「健康に良さそうな脂」ではなく、
- 細胞膜の一部になり、ホルモンやシグナルの伝達を変える
- NF-κBなどの炎症系のスイッチを弱める
- TNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインを減らす
- その結果、「レゾルビン」など炎症を終わらせる物質の材料にもなる
といった仕組みで、炎症・代謝・筋タンパク質の代謝に関わっています。
つまり、筋肉や脂肪の「反応のしやすさ」に影響を与える土台の部分に効いてくるイメージです。
筋タンパク質合成への影響
まず、高齢者を対象とした研究からご紹介します。
ある研究では、高齢者にDHA/EPAを1日約3.9g(EPAとDHAの合計)を16週間摂取させ、レジスタンストレーニングと組み合わせました。すると、
- 安静時の筋タンパク質合成
- トレーニング後のミトコンドリアやミオフィブリルの合成
が増えたと報告されています。
つまり、「栄養+運動に対する筋肉の反応性が回復した」と解釈できる結果です。
一方で、別のレビューでは、n-3脂肪酸の摂取によって全身のタンパク質合成は増えたものの、局所の筋タンパク質合成は明確な有意差が出なかったという報告もあります。
そのため、若くて元気なトレーニーでは、DHA・EPAによる筋肥大効果はあったとしてもかなり小さい可能性が高いと考えられます。
筋力・筋量・機能面
次に、筋力や筋量への影響です。
高齢者(55歳以上)を対象とした複数研究をまとめたメタアナリシスでは、
- 除脂肪量(筋肉量)自体への影響はごく小さく、有意といえない
- しかし、下肢筋力や「椅子からの立ち上がりテスト」「Timed Up & Go」などの機能テストは有意に改善
という結果が出ています。
つまり、筋肉の大きさよりも「動けるかどうか」や「立ち上がれるかどうか」といった機能面に効きやすいというイメージです。
さらに、レジスタンストレーニングとDHA/EPAを組み合わせた研究をまとめた解析では、
筋量や全体の筋機能に関しては有意差がない一方で、やはり椅子立ち上がりなどの“実用的な動き”にはメリットがあると報告されています。
そのため、若いトレーニーにとっては爆発的な筋肥大サプリではありませんが、特に高齢者やサルコペニア予備軍にとっては、筋力と日常動作の維持を後押しする栄養素として期待できます。
回復・筋肉痛への影響
ここからは回復のお話です。
いくつかの研究では、DHA/EPAの摂取によって筋肉痛や筋力の回復が改善したという結果が出ています。
たとえば、
- EPA約2.1g+DHA約1.1gを数日間摂取させた研究では、きつめのレジスタンストレ後の筋肉痛と筋力回復が改善
- 別の研究では、EPAまたはDHAを1日4g、7週間摂取することで、運動後の筋肉痛が有意に減少
といった報告があります。
これは、DHA/EPAの抗炎症作用や、筋細胞膜の安定化によるものと考えられています。
つまり、ハードにトレーニングを続けたい人にとって、DHA・EPAは**「翌日以降も動ける身体にしてくれるサポート役」**と言えます。
体重・体脂肪への直接効果
次に、ダイエットとの関係です。
結論からいうと、DHA/EPAを飲むだけで体重が大きく落ちる、という明確なエビデンスはありません。複数のメタアナリシスやレビューでは、体重や全身の体脂肪量の減少はごくわずか、もしくは有意差なしと報告されています。
しかし、ここで一つ面白いポイントがあります。
あるランダム化比較試験では、BMI 27〜35の肥満〜過体重の成人に対して、
- カロリー制限食のみ
- カロリー制限食+オメガ3(EPA+DHA合計約1g/日)
を12週間比較したところ、体重やBMI自体は両群とも同程度しか減らなかったものの、オメガ3群では腹部脂肪量と腹部脂肪率がより大きく減少したという結果が出ています。
つまり、体重計の数字を大きく動かす力は弱いものの、お腹まわりなど脂肪の“つき方・落ち方”には少し良い影響が出る可能性がある、ということです。
食欲・代謝・炎症
さらに、DHA/EPAは「環境づくり」という意味でダイエットを支えます。
いくつかの研究では、n-3脂肪酸の摂取によって、
- インスリン感受性の改善
- 脂質代謝の改善(中性脂肪低下など)
- 慢性的な炎症の低下
が報告されています。
また、一部の研究では食欲や摂取カロリーがやや下がったというデータもありますが、こちらは結果がバラバラで、必ずしも「食欲が確実に落ちる」とまでは言えません。
とはいえ、肥満やメタボリックシンドロームの人では、DHA/EPAによって代謝と炎症が整い、“痩せやすい土台”を作る可能性があります。
したがって、ダイエットの主役はあくまでカロリー管理ですが、その土台を支える「裏方スタッフ」としては十分に価値がありそうです。
じゃあ実際、どれくらい摂ればいい?
ここまで読むと、「どれくらいDHA/EPAを摂ればいいのか?」が気になると思います。
そこで、実務的な目安をまとめておきます。
健康維持としての最低ライン
多くの国際的なガイドラインでは、DHA+EPA合計で1日250〜500mg程度を健康維持の最低ラインとして推奨しています。
これは、青魚を週に2〜3回食べるイメージです。
筋肉・回復を狙う場合の目安
筋肉や回復をターゲットにした研究では、
- DHA+EPA合計で1〜3g/日
- 高齢者の筋タンパク質合成や回復改善を狙った研究では約3.9g/日
- 筋肉痛軽減を狙った研究ではEPA 2.1g+DHA 1.1g(合計約3.2g)
といった用量が使われています。
したがって、トレーニングや減量をしっかりやっている人がサプリで狙うなら、1〜2g/日くらいが現実的な落としどころになります。
安全性と上限
ここで、一つ注意点です。
アメリカFDAは、一般的な人に対してEPA+DHA合計3g/日(サプリからは2g/日まで)をひとつの目安としています。
また、ヨーロッパのEFSAは5g/日まで安全としつつも、高用量では心房細動リスクがわずかに上がる可能性を指摘する報告もあります。
そのため、
- 心疾患の既往がある方
- 抗血栓薬(ワーファリンなど)を使用している方
は、必ず医師と相談したうえで高用量を検討した方が安全です。
それ以外の方でも、「多ければ多いほど良い」という発想ではなく、1〜2g/日くらいを上限に、様子を見ながら使っていくのがおすすめです。
まとめ:DHA/EPAは“コンディショニング+ロスカット”のサプリ
最後に、筋トレとダイエットをしている人目線でまとめます。
- 筋トレに対して
- DHA/EPAは筋肥大ブースターというより、筋力・機能・回復をじわっと支えるサポート役
- 特に高齢者や筋力低下が気になる方では、実用的な動作(立ち上がりなど)を改善するエビデンスがある
- ダイエットに対して
- 体重そのものを大きく落とす力は弱い
- とはいえ、腹部脂肪の減少・炎症低下・代謝改善など、痩せやすい体づくりに貢献してくれる可能性がある
- 全体として
- カロリー設定・タンパク質、そして筋トレのプログラム設計が「90〜95%の成果」を決める
- 一方で、DHA/EPAは残り数%の部分で、**コンディショニングとロスカット(筋力低下や回復不良の予防)**を狙うポジションが現実的
パーソナルジムEvolveでの実践イメージ
パーソナルジムEvolveでは、まずはトレーニングメニューとカロリー設定・タンパク質量を軸にしたプランを組み立てます。
そのうえで、必要に応じてDHA/EPAのようなサプリメントも、「筋力維持を少しでも底上げしたい高齢のお客様」「減量中でもパフォーマンスを落としたくない方」に対して補助的に活用していきます。
つまり、「サプリから考える」のではなく、トレーニングと食事を固めたうえで、最後にDHA/EPAをうまく足していくイメージです。
筋トレとダイエットの土台を整えたうえで、サプリメントをどこまで取り入れるかを一緒に設計していきましょう。
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