パーソナルジムEvolveの松下です。
「脂質=太る原因」と思われがちですが、実は筋トレやダイエット、そしてホルモンバランスやメンタルにまで深く関わる大事な栄養素です。
まず大前提として、脂質は「量と質と使い方」を間違えると太りやすくなります。
しかし一方で、脂質を削りすぎると筋肉の成長が鈍り、ホルモンバランスが崩れ、体調もメンタルも不安定になりやすくなります。
つまり、筋トレとダイエットを両立させるには、「脂質をどれだけ摂るか」だけでなく「どの種類の脂質をどう使うか」を理解しておくことが重要です。
この記事では、脂質の働きや種類、そしてエビデンスを交えながら、実践的な考え方までまとめていきます。
そもそも脂質はどんな役割をしているのか?
高効率なエネルギー源
まず、脂質は1gあたり9kcalと、糖質・たんぱく質(4kcal/g)の約2倍以上のエネルギーを持っています。
安静時や、軽め〜中程度の強度の運動では、体はかなりの割合で脂肪酸をエネルギー源として利用しています。
さらに、余ったエネルギーは「トリグリセリド」という形で体脂肪として蓄えられます。
結果として、カロリーオーバーが続くと体脂肪が増えていきますが、これは「脂質を食べたから」というより「総カロリーが多すぎたから」と考える方が正確です。
細胞膜・ホルモン・神経の材料
次に、脂質は単なる“燃料”ではありません。
実は、体の構造そのものを作る重要な材料でもあります。
- 細胞膜の材料(リン脂質+コレステロール)
- テストステロンやエストロゲン、コルチゾールなどのステロイドホルモンの原料
- 神経を覆うミエリン鞘(電気信号の通り道の絶縁体)の材料
このため、脂質が極端に不足すると、ホルモンバランスが乱れたり、神経の働きが落ちたり、体調全体が不安定になりやすくなります。
特に筋トレをしている人にとっては、
- テストステロン:筋肥大や筋力アップに関与
- 成長ホルモン・IGF-1:回復や筋合成に関与
- コルチゾール:ストレスや過度な減量で増えすぎると筋分解方向に働く
といったホルモンと脂質の関係を無視できません。
つまり、脂質は「筋肉の土台となるホルモン環境」を支える存在でもあるわけです。
脂質の種類とそれぞれの特徴
ここからは、よく出てくる脂質の種類を整理していきます。
同じ「脂質」でも、体への影響はかなり違います。
飽和脂肪酸(SFA)
まず、飽和脂肪酸です。
- 主な食品:バター・ラード・牛や豚の脂身・ココナッツオイルなど
- 室温で固まりやすい脂
伝統的には、飽和脂肪酸の摂りすぎはLDLコレステロール(いわゆる悪玉)を増やし、心血管リスクを高めるとされてきました。
しかし最近の研究では、「どんな食品に含まれているか」「食事全体のパターン」が大事だという指摘も増えています。
とはいえ、総カロリーオーバー+飽和脂肪酸過多になれば、やはり体脂肪も健康リスクも増えやすくなります。
そのため、筋トレやダイエットの観点からは「ゼロにする必要はないが、ベースにはしない」という立ち位置が現実的です。
一価不飽和脂肪酸(MUFA)
次に、一価不飽和脂肪酸です。
- 主な食品:オリーブオイル、アボカド、ナッツ類(オレイン酸が代表)
一価不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを下げつつ、HDL(善玉)を保つ・やや上げる方向のデータが多くあります。
たとえば、地中海食(オリーブオイル多めの食事)は心血管リスクを下げることが、複数の研究で示されています。
そのため、日常的に摂る脂質の「主役」を一価不飽和脂肪酸にしておくと、健康とダイエットの両立がしやすくなります。
さらに、ナッツやアボカドは満腹感も得やすいので、減量中の空腹対策としても有効です。
多価不飽和脂肪酸(PUFA):オメガ6・オメガ3
続いて、多価不飽和脂肪酸です。
とくに重要なのが「n-6系(オメガ6)」と「n-3系(オメガ3)」です。
n-6系脂肪酸(リノール酸など)
- 主な食品:大豆油・コーン油・一般的なサラダ油・外食の揚げ油など
適量であればコレステロール改善に役立つとされています。
しかし、現代の食生活ではn-6系が過剰になりやすく、n-3系とのバランスが崩れることで、炎症傾向を高める可能性が指摘されています。
n-3系脂肪酸(EPA・DHA・ALAなど)
- 主な食品:サバ・サンマ・イワシなどの青魚(EPA・DHA)、えごま油・亜麻仁油(ALA)
n-3系脂肪酸には、
- 抗炎症作用
- 血流の改善
- インスリン感受性の改善
- 脳機能・メンタルヘルスのサポート
など、さまざまなメリットが報告されています。
さらに、いくつかの研究では、EPA・DHAの摂取が筋肉痛の軽減やサルコペニア(加齢による筋減少)の予防に役立つ可能性も示されています。
つまり、青魚からの脂質は、筋トレ勢にとって「体脂肪を増やさずにパフォーマンスを支える脂」としてかなり優秀です。
トランス脂肪酸(TFA)
最後に、トランス脂肪酸です。
- 主な食品:一部のマーガリン、ショートニング、スナック菓子、外食の揚げ物などに含まれる「工業的トランス脂肪酸」
トランス脂肪酸は、
- LDL(悪玉)↑
- HDL(善玉)↓
- 炎症性マーカー↑
という、かなり悪い方向に作用しやすいことが多くの研究で示されています。
そのため、筋トレやダイエット以前に、「健康のために極力減らしたい脂質」と考えておくといいです。
脂質と筋トレ:筋肥大・ホルモンへの影響
テストステロンと脂質摂取量
ここからは、筋トレとの関係をもう少し踏み込んで見ていきます。
まず、いくつかの研究では、
- 総カロリーに対する脂質比率が極端に低い(15%以下など)食事
→ 総テストステロン・遊離テストステロンが低下しやすい - 脂質比率が20〜35%程度の範囲
→ テストステロンが維持されやすい、あるいはやや高めに保たれやすい
という傾向が報告されています。
つまり、減量だからといって脂質を削りすぎると、テストステロンが下がり、結果として筋合成に不利になる可能性があるということです。
特に、カロリー制限+高強度トレーニングという状況では、ホルモン環境を保つためにも脂質を完全には削らない方が賢明です。
筋タンパク質合成への間接的な影響
筋タンパク質合成(MPS)のスイッチを入れる主役は、
- 十分な量のたんぱく質(特にロイシン)
- 適切なトレーニング刺激(メカニカルテンション)
です。
したがって、脂質自体が直接mTORシグナルを大きく刺激して「脂質を摂れば筋肉が爆発的に増える」というイメージではありません。
しかし一方で、脂質はホルモンや炎症状態、インスリン感受性を通じて、間接的に筋合成に関わります。
さらに、n-3系脂肪酸(EPA/DHA)は、高齢者の筋量維持や筋力アップを助けたという介入研究もあり、筋トレと相性の良い脂質だと言えます。
ダイエットと脂質:どこまで削っていいのか?
低脂質vs低炭水化物ダイエットのエビデンス
多くの研究やメタアナリシスでは、
- 総カロリーとたんぱく質量が同じであれば、
低脂質ダイエットでも低炭水化物ダイエットでも、体重と体脂肪の減少量はほぼ同程度になりやすい
という結果がよく出ています。
つまり、「脂肪を削るか」「炭水化物を削るか」という議論よりも、
実は「トータルでどれくらいのカロリー赤字を作れるか」と「その食事を続けられるかどうか」の方がはるかに重要だということです。
とはいえ、筋トレ勢にとってはもう一つ大事なポイントがあります。
それは、
- 筋肉を守る → 体重1kgあたり1.6g前後のたんぱく質をキープ
- ホルモンを守る → 脂質を総カロリーの20%以下まで削りすぎない
という2本柱です。
減量期の脂質コントロールの実践方法
では、実際にどう考えればいいでしょうか。
ここでは、現実的な指標をいくつか挙げます。
- 脂質は「総カロリーの20〜30%」を目安に設定する
- 飽和脂肪酸は「総カロリーの10%以下」を目安に抑える
- ベースの脂質は、オリーブオイル・アボカド・ナッツ・青魚などから確保する
- 反対に、スナック菓子や外食の揚げ物、加工肉などからの脂質は頻度と量を減らす
こうすることで、カロリーは調整しつつも、ホルモンと健康を守りやすくなります。
結果として、筋肉を残しながら体脂肪を落とす“ボディメイク寄りのダイエット”がやりやすくなります。
脂質と体の変化:炎症・メンタル・コンディション
慢性炎症とオメガ3
肥満や内臓脂肪の増加は、体内の「慢性炎症(低グレード炎症)」と関係していることが分かっています。
この状態では、インスリンの効きが悪くなり、太りやすく・痩せにくい体になりやすいと言われます。
ここで、n-3系脂肪酸(EPA・DHA)の出番です。
複数の研究で、EPA・DHAが炎症性サイトカインを抑え、抗炎症性の方向にバランスを整えてくれることが報告されています。
その結果として、
- インスリン感受性の改善
- 筋肉痛の軽減
- 心血管リスクの低下
などが期待されています。
メンタルと脳の状態
さらに、脂質は脳にも大きく関わります。
脳のかなりの部分は脂質で構成されており、とくにDHAは神経細胞の膜の重要な成分です。
実際に、n-3系脂肪酸の不足と抑うつ症状との関連を示す研究も多く、EPA/DHAのサプリがメンタルの補助療法として使われることもあります。
減量中にメンタルが落ち込む人の中には、カロリーだけでなく、脂質の量と質を削りすぎているケースも少なくありません。
つまり、脂質は「見た目」だけでなく、「気分」「やる気」「集中力」にもつながる栄養素だということです。
まとめ:筋トレとダイエットでの脂質の扱い方
最後に、ここまでの内容を実践レベルにまとめます。
- 脂質は完全な悪者ではなく、「摂りすぎると太るが、削りすぎるとホルモンと健康が崩れる」存在
- 総カロリーの20〜30%程度を脂質から摂り、その中で
- ベースはオリーブオイル・ナッツ・アボカド・青魚などの良質な脂
- 飽和脂肪酸は控えめ
- トランス脂肪酸は極力カット
- 減量中も、たんぱく質は十分に、脂質も必要最低限は残すことで、筋肉とホルモンを守る
- n-3系脂肪酸(EPA・DHA)を意識して増やすことで、炎症・回復・メンタルにも良い影響が期待できる
つまり、「脂質をどう削るか」ではなく、「どんな脂質をどのくらい残すか」を考えることが、筋トレとダイエットを両立するうえでの鍵になります。
Evolveでは、お客様の目標やライフスタイルに合わせて、カロリーだけでなく脂質のバランスも一緒に設計していきます。
筋肉をしっかり育てながら、無理のないダイエットを進めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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