筋トレを続けていると、ほとんどの人が一度は悩むのが「まだ筋肉痛が残っているけど、今日もトレーニングをして大丈夫なのか?」という問題です。
まず、この疑問に答えるためには「筋肉痛の時、筋肉の中で何が起きているのか」を正しく理解する必要があります。
そこで本記事では、最新の研究データを踏まえながら
- 筋肉痛の時の筋肉の状態
- 筋肉痛のまま筋トレを続けるとどうなるのか
- 筋肉痛がある時の正しい筋トレのやり方
をまとめて解説していきます。
最後まで読んでいただければ、「今日は休むべきか、内容を変えて続けるべきか」がかなりスッキリ判断できるはずです。
筋肉痛の時、筋肉の中では何が起きているのか
まずは筋肉痛そのものの中身から整理していきます。
2004年に発表された論文では、大腿四頭筋が筋肉痛になった時のMRI画像が示されています。
ここでは
- トレーニングをしていない脚
- 慣れないトレーニングを行い、強い筋肉痛が起きた脚
を比較しています。
その結果、筋肉痛が起きた側の大腿四頭筋全体が白く写り、高信号を示していることが分かりました。これは筋肉や周囲の組織に水分が集まり、炎症が起きている状態を反映していると考えられています。
次に、2024年にドイツスポーツ大学から発表された研究では、電子顕微鏡を使って筋肉痛が起きた時の筋線維を直接観察しています。
- A:筋肉痛が起こる前の筋線維
- B:トレーニング後、筋肉痛が起きた時の筋線維
- C:損傷した筋線維が修復されていく過程
という形で比較されました。
すると、筋肉痛が起きた状態では、筋線維に「部分的な微細損傷」が見られるものの、筋肉全体がズタボロに破壊されているわけではないことが示されています。
さらに、筋肉痛の痛みは筋線維だけが原因ではありません。
実際には
- 筋肉を包んでいる筋膜
- 関節周囲の結合組織
- それらに起きた軽度の炎症
によって発痛物質がつくられ、関節を動かしたり、筋肉を押したりした時に痛みが出るとされています。
つまり、筋肉痛とは
- 筋線維の軽い損傷
- 筋膜や関節周囲の組織に起こる炎症
が合わさって感じる現象であり、「筋肉が完全に壊れてしまっている状態」ではないということです。
筋肉痛のまま筋トレをしたらどうなるのか
では、ここから本題です。
筋肉痛が残っている状態で筋トレを続けると、筋肉はどうなってしまうのでしょうか。
まず、この疑問を直接調べた研究として、2006年にとある国立大学から発表されたデータがあります。
この研究では、51名の筋トレ初心者を対象に、全員に高負荷のダンベル運動を行ってもらい、意図的に筋肉痛を起こしました。
そのうえで、
- 片方のグループ:筋肉痛が治るまで休む
- もう片方のグループ:筋肉痛が全く治っていない状態で、次の運動を実施する
という形で比較が行われました。
その結果としては
- 筋肉痛が残ったままトレーニングをしても、筋肉の発達はしっかり起こる
- さらに、痛みが極端に悪化することもなかった
という結論が示されています。
研究者たちは、そもそも筋肉痛は「不慣れな運動により起こる微細損傷と、その周囲の結合組織のダメージ」が中心であり、「筋肥大そのものとはほぼ無関係」であると述べています。
つまり
- 筋肉痛があっても筋肥大はちゃんと起こる
- 筋肉痛があるからといって、特別に筋肥大が止まるわけでも、逆に強く起こるわけでもない
ということです。
ただし、筋肉痛は筋力を大きく下げてしまう
しかし、筋肉痛には明確なデメリットもあります。
2024年に日本人を対象に行われたデータでは、筋肉痛が発生することで「最大30%の筋力低下」が起きることが示されています。
つまり
- 痛みが強い状態では、どうしても力が出しにくい
- その結果、トレーニングの質は下がりやすい
ということです。
当然ですが、狙った強度で質の高いトレーニングを行いたい場合、強い筋肉痛はかなり邪魔になります。
なので、筋肉痛そのものは「筋肥大にとって必須条件ではない」どころか、「トレーニングの質を下げる要因」として捉えておいた方が現実的です。
やりすぎると「筋肉が溶ける」危険もある
一方で、筋トレを始めたばかりの人ほど、結果を急ぎがちです。
そのため、筋肉痛が強く出ているにもかかわらず
- 筋肉痛=成長している証拠だから、もっと追い込もう
- 痛いけど気合いで高重量・高ボリュームをやる
といったマインドになりやすくなります。
しかし、この考え方が行き過ぎると「筋肉が溶ける」リスクが出てきます。
専門用語では横紋筋融解症と呼ばれる状態です。
2021年にコスタリカ国立大学から発表されたレビューでは、持久力系スポーツを中心に、横紋筋融解症のリスク要因が整理されています。
そこでは特に
- 高温多湿な環境
- 慣れていない激しい運動
- エキセントリック収縮(筋肉が伸ばされながら力を出す局面)を多用すること
などが重なると、横紋筋融解症のリスクが大きく高まると報告されています。
これを筋トレに当てはめると、
- まだ筋トレに慣れていない初心者
- 夏場などの暑い環境
- 強い筋肉痛が残っている状態
- さらに高ボリューム・高強度でエキセントリックをガンガン効かせる
といった条件が重なることで、「筋肉が溶けるレベルのダメージ」にまで到達してしまう可能性がある、ということです。
特に、筋肉痛が強い状態で
- ゆっくり下ろす
- ネガティブ動作を強調する
- 限界まで反復を繰り返す
といったエキセントリック中心のトレーニングを続けるのは、リスクが高くなります。
だからこそ、筋肉痛が強く出ている時には「追い込み方」を慎重にコントロールする必要があります。
筋肉痛がある時の正しい筋トレの組み立て方
それではここから、実際にどう行動すればいいのかを整理していきます。
分割法なら筋肉痛の部位は避ける
まず、上半身・下半身など、分割法でトレーニングしている場合はシンプルです。
筋肉痛がある部位は無理に刺激せず、痛みの少ない部位を優先的に鍛えましょう。
- 脚が強い筋肉痛 → 上半身の日にする
- 胸が筋肉痛 → 背中や脚をメインにする
というイメージです。
完全休養が取れるなら、それももちろん問題ありません。
継続率が落ちる人は「強度を落としてでも続ける」という選択肢もあり
一方で、何日も続けて休んでしまうと、トレーニングの継続率が下がるタイプの人もいます。
その場合は、完全にゼロにするのではなく
- 強度(重量)を落とす
- 回数やセット数を抑えてボリュームを落とす
- いつも通りの重量でも、エキセントリックの負荷を減らす
といった形で「ダメージを増やさないトレーニング」に切り替えるのがおすすめです。
エキセントリック収縮を強調しない
ここで重要になるのが、エキセントリック収縮の扱い方です。
例えばダンベルカールで考えてみると
- ダンベルを持ち上げる局面(肘を曲げる)はコンセントリック収縮
- ダンベルを下ろす局面(肘を伸ばす)はエキセントリック収縮
になります。
筋肉痛が強い時には
- 下ろす動作をゆっくりにしすぎない
- ネガティブだけを強調するテクニックは避ける
- 無理に限界まで追い込まない
といった形で、エキセントリック中心の刺激を控えることが大切です。
強度の目安は1RM60%(15回で限界)
また、筋肉痛があるタイミングでトレーニングを続ける場合は、強度設定も重要です。
目安としては
- 1RMの60%程度(15回前後で限界が来る重さ)
まで落としておくと、負担を抑えながら動かすことができます。
特に
- 痛みの強さが10段階中5〜10の「中〜高強度」の場合 → 必ず負荷を落とす
- 痛みが1〜3程度のごく軽い違和感レベル → 通常の強度でも大きな問題は起きにくい
といったイメージで調整していきましょう。
筋肉痛は72時間以内が目安。1週間続くなら一度ストップ
基本的に、一般的な筋肉痛(遅発性筋肉痛)は
- おおよそ72時間以内に消えていく
と言われています。
そのため、もし
- 1週間以上、強い痛みがずっと続いている
- 触れなくてもズキズキ痛む
- 日常生活の動作でも強い違和感がある
といった場合は、一度トレーニングを数日間しっかり休むべきです。
それでも痛みが引かない場合や、尿の色が極端に濃い・だるさが強いなどの症状があれば、横紋筋融解症のリスクもゼロではありません。
その時は迷わず病院を受診するようにしましょう。
まとめ:筋肉痛との付き合い方を知れば、筋トレはもっと安全に続けられる
ここまでの内容を整理すると、筋肉痛と筋トレの関係は次のようにまとめられます。
- 筋肉痛の正体は、筋線維の微細損傷と筋膜・関節周囲の炎症
- 筋肉痛があっても筋肥大は起こるし、痛みがあるからといって筋肥大が止まるわけではない
- ただし筋肉痛によって最大30%ほど筋力が低下し、トレーニングの質は落ちやすい
- 強い筋肉痛のまま、高温環境・高ボリューム・エキセントリック強調で追い込むと、横紋筋融解症のリスクが上がる
- 分割法なら筋肉痛の部位は避けて、他の部位を鍛えるのが基本
- 継続を重視するなら、強度やボリュームを落としつつ「動かし続ける」という選択も有効
- 痛みが強い時は1RM60%程度まで強度を落とし、エキセントリック収縮を強調しない
- 筋肉痛は通常72時間以内には落ち着くが、1週間以上続くなら休養と受診を検討する
正しい知識を持って筋肉痛と付き合うことで、「無駄に休みすぎる不安」と「無茶して壊してしまうリスク」のどちらも避けやすくなります。
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