テストステロンという言葉は、筋トレ界隈ではよく耳にするホルモンです。
しかし、なんとなく「高い方が良さそう」「男らしさのホルモン」というイメージだけで、具体的に何をしているのかまでは知られていないことが多いです。
しかも、ネット上では「テストステロンさえ上げれば筋肉は勝手につく」といった極端な情報や、ステロイド使用を安易にすすめるような危ない情報も混ざっています。
だからこそ、まずはテストステロンの正体と、筋トレ・ダイエット・メンタルへの具体的な影響を冷静に整理しておくことが大切です。
この記事では、テストステロンとは何者なのか、その仕組みとエビデンス、そして自然な範囲でテストステロンを良い状態に保つ方法までわかりやすく解説していきます。
テストステロンとは何者か
まず、テストステロンは「男性ホルモン」の代表格です。
主に男性では精巣から、女性では卵巣と副腎から分泌されます。女性にも少量ながら分泌されていて、男女ともに健康状態や体組成に重要な役割を持っています。
また、テストステロンは次のような働きに関わります。
- 筋肉量や筋力
- 骨密度
- 体脂肪量(特に内臓脂肪)
- 性欲や勃起機能
- やる気や自信、メンタルの安定
- 赤血球の産生(スタミナ面)
さらに、テストステロンは脳と精巣の「性腺軸」と呼ばれる仕組みでコントロールされています。
- 視床下部からGnRHというホルモンが出る
- すると、下垂体からLH・FSHが分泌される
- それを受けて精巣がテストステロンを作る
- テストステロンが増えすぎると、「もう十分」と脳にフィードバックがかかり、分泌が抑えられる
このように、体内ではテストステロンが出すぎないように、自動的にバランスを取る仕組みが働いています。
さらに、血液中のテストステロンは大部分がSHBG(性ホルモン結合グロブリン)というタンパク質とくっついています。
そして、実際に細胞に作用できるのは「遊離テストステロン(フリーテストステロン)」と呼ばれるごく一部です。
一般的には、このフリーの量が、筋肉のつきやすさや性欲、元気さといった体感に近いと考えられています。
テストステロンと筋トレの関係
次に、多くの人が気になる「テストステロンと筋トレ」の関係を見ていきます。
筋肥大と筋力アップ
テストステロンは、ざっくり言うと「筋タンパク質の合成を進めるホルモン」です。
仕組みを簡単に整理すると次の通りです。
- テストステロンが筋細胞のアンドロゲン受容体にくっつく
- その複合体が核の中に入り、筋タンパク質を作る遺伝子のスイッチをオンにする
- その結果、筋タンパク質の合成が増え、分解が抑えられる
- さらに、サテライト細胞(筋幹細胞)も刺激され、筋線維の核の数が増える
核の数が増えると、将来的に筋肉を太くしやすい「土台」が整うので、長期的な筋肥大にとって重要です。
そのため、テストステロンが適切に分泌されている人ほど、同じトレーニング量でも筋肉の伸びが良い傾向があります。
とはいえ、自然な範囲のテストステロンの違いだけで、劇的な差がつくわけではありません。
結局のところ、トレーニングボリューム、種目選択、フォーム、栄養、睡眠といった基本要素の方が、筋肥大にははるかに大きく影響します。
回復力とトレーニングのモチベーション
また、テストステロンは筋肉そのものだけではなく、トレーニングを続けるための土台にも関わります。
- 疲労からの回復のしやすさ
- トレーニングに向かうやる気やアグレッシブさ
- ポジティブさや自信
一方で、テストステロンがかなり低くなると、
- 筋肉が落ちやすい
- 疲れやすくなる
- トレーニングのパフォーマンスが下がる
- 性欲低下や気分の落ち込みが出やすい
といった状態になります。
つまり、テストステロンは「筋肉の材料を増やす役」と「トレーニングを継続させるメンタルの燃料」の両方を支えているホルモンだと考えるとイメージしやすいです。
テストステロンとダイエット・体脂肪
それでは、ダイエットとの関係はどうでしょうか。
体脂肪との悪循環
テストステロンは、筋肉だけでなく体脂肪にも影響します。
- 筋肉量が増えることで、基礎代謝が上がる
- 一方で、脂肪細胞への脂肪蓄積をある程度抑える
- 特に内臓脂肪に対して、抑制的に働くと考えられています
しかし、逆に体脂肪が増えすぎると、今度はテストステロンが下がってしまうという悪循環もあります。
なぜなら、脂肪細胞には「アロマターゼ」という酵素があり、テストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)へと変えてしまうからです。
さらに、肥満に伴うインスリン抵抗性や慢性的な炎症も、テストステロン低下に結びつきやすいことが分かっています。
そのため、
- 太る
- テストステロンが下がる
- 筋肉がつきづらく、痩せづらくなる
- さらに太る
というループにハマる人も少なくありません。
減量中のテストステロン
一方で、減量中もテストステロンは大きく動きます。
特に、ハードすぎるカロリー制限や長期間の減量を行うと、テストステロンは下がりやすくなります。
- カロリー不足や体脂肪の極端な減少
- 強いストレス
- 睡眠不足
こういった条件が重なると、筋肉が落ちやすくなり、トレーニングのパフォーマンスも落ちてしまいます。
ボディビルの大会前のような、かなり低い体脂肪を目指すケースでは、この現象が顕著に表れます。
だからこそ、減量中は次のような工夫で、テストステロンの落ち幅を抑えることが大切です。
- タンパク質をしっかり確保する
- 無茶なカロリー制限を避ける
- 睡眠時間と質を確保する
- ストレスや疲労を溜め込みすぎない
筋トレ以外の身体への影響
テストステロンは、筋肉と脂肪だけでなく、全身のさまざまな部分に影響します。
骨密度と骨粗鬆症リスク
まず、テストステロンは骨を作る骨芽細胞を刺激します。
その結果、骨密度を維持しやすくなり、骨粗鬆症の予防にもつながります。
特に、テストステロンが極端に低い男性では、骨粗鬆症のリスクが高まることが知られています。
筋トレとテストステロンは、骨の健康面でも心強いコンビと言えます。
赤血球とスタミナ
さらに、テストステロンは赤血球の産生を促す作用も持っています。
赤血球が増えると酸素運搬能力が上がるため、スタミナや持久力の面でもプラスに働きます。
ただし、テストステロンが異常に高くなりすぎると、血液がドロドロ寄りになり、血栓や心血管イベントのリスクが上がる可能性もあります。
そのため、「高ければ高いほど良い」というものではありません。
性欲とメンタル
また、テストステロンは性欲や勃起機能、メンタルにも深く関わります。
- 性欲の強さ
- 集中力や自信
- 活力やポジティブさ
こういった要素とテストステロンは、一定の関連があると報告されています。
一方で、テストステロンがかなり低い状態では、無気力や性欲低下、不安感やうつっぽさが出ることもあります。
テストステロンに関するエビデンスのざっくり整理
ここで、研究結果から分かっていることを簡単にまとめておきます。
まず、テストステロンが低い男性に対して、医療としてテストステロンを補充すると、筋肉量や筋力が増えやすいことは多くの研究で示されています。
しかし、もともと正常範囲にある人が、少し高めになる程度では、筋肉の伸びにそこまで劇的な差が出るわけではないとも言われています。
つまり、筋肥大の主役はあくまで筋トレと栄養であり、テストステロンはその土台を支える存在です。
また、肥満男性ほどテストステロンが低い傾向があり、ダイエットで体脂肪が減ると、テストステロンが改善するという研究も多く報告されています。
特に、内臓脂肪が減ることはテストステロンの改善にとってプラスになりやすいです。
さらに、睡眠はテストステロンと強く関連しています。
睡眠時間が短い状態が続くと、テストステロンは有意に低下しやすいことが示されています。
逆に、7〜9時間程度の十分な睡眠は、日中のテストステロンを維持するうえで重要です。
加えて、慢性的なストレスによってコルチゾールが高い状態が続くと、テストステロンは抑制されやすくなります。
仕事のストレス、睡眠不足、過度なトレーニングが重なると、ホルモンバランスが崩れやすい点には注意が必要です。
テストステロンを自然な範囲で保つ・活かす方法
では、ここからは実際に役立つ「自然なテストステロン対策」を整理していきます。
多関節種目を中心にした筋トレ
まず、筋トレはテストステロンを活かすうえで欠かせません。
特に、次のような多関節種目は長期的な筋肉量アップにも効果的です。
- スクワット
- ベンチプレス
- デッドリフト
- ローイング系種目
中〜高強度(おおよそ8〜12回できる重さ)で、適切なボリュームを継続することで、筋肉量が増え、基礎代謝も上がります。
短時間の急激なホルモン上昇そのものよりも、長期的な体組成改善の方が、テストステロンとの相性としては重要です。
体脂肪を「多すぎず少なすぎず」に保つ
次に、体脂肪率のコントロールも大切です。
体脂肪が多すぎるとテストステロンが下がり、少なすぎてもやはりテストステロンは落ちてしまいます。
目安としては、男性なら「健康的に腹筋のラインがうっすら見えるかどうか」くらいの体脂肪ゾーン(おおよそ10〜18%程度)が、ホルモンバランス的にも悪くないラインになりやすいです。
無理な絞りすぎは、パフォーマンスやメンタルの面でもマイナスになりやすいので注意が必要です。
睡眠の質と量を整える
さらに、テストステロンを語るうえで睡眠は外せません。
テストステロンは朝に一番高く、日中にかけて少しずつ下がっていくという日内リズムがあります。
- 7〜9時間程度の睡眠時間を確保する
- 寝る前のスマホやカフェインを控える
- 就寝時間と起床時間をある程度一定にする
こういった基本的な睡眠習慣は、テストステロンの維持にとってとても重要です。
栄養面で意識したいポイント
食事の中でテストステロンと関わりが深いのは、主に次の栄養素です。
まず、脂質です。
極端な低脂質ダイエット(総カロリーの15%以下など)はテストステロンの低下と関連が報告されています。
目安として、総カロリーの20〜35%程度を脂質から摂る範囲にしておくと、ホルモン的には無難になりやすいです。
卵黄、青魚、ナッツ、オリーブオイルなど、質の良い脂質を組み合わせていきましょう。
さらに、亜鉛とマグネシウムも重要です。
亜鉛不足はテストステロン低下と結びつきやすく、肉類や牡蠣、卵などをしっかり食べることが大切です。
また、マグネシウムは代謝や睡眠にも関わるため、欠乏しないよう意識しておくと安心です。
加えて、ビタミンDもポイントになります。
ビタミンD欠乏とテストステロン低値は関連があるとする研究が多く、日光を浴びたり、必要に応じてサプリで補うことで、軽い改善が見られるケースも報告されています。
そして、筋トレをする人にとっては、タンパク質不足も避けたいところです。
体重1キロあたり1.6〜2.2グラム程度のタンパク質を目安に、肉、魚、卵、大豆製品、プロテインなどから確保していきましょう。
ストレスマネジメントと休養
さらに、ストレスもテストステロンに大きく影響します。
強いストレスが長期間続くと、コルチゾールというストレスホルモンが高い状態になり、テストステロンを抑え込んでしまいます。
- 週単位で見たときに休養日をしっかり作る
- 定期的にデロード(負荷やボリュームを落とす期間)を入れる
- 趣味やリラックスできる時間を意識的に確保する
こういった「オフの設計」も、テストステロンを守るためには重要です。
アルコールと喫煙
最後に、アルコールと喫煙も触れておきます。
大量のアルコールは精巣の働きを落とし、テストステロン低下につながる可能性があります。
また、喫煙も血管やホルモンバランスに悪影響を及ぼすことが知られています。
たまの飲み会レベルであれば問題になることは少ないですが、「習慣的な飲みすぎ」や「ヘビースモーカー」は、筋トレやホルモン的にはマイナス要因になりやすいです。
テストステロン投与・ステロイドについての注意点
ここまで自然なテストステロンの話をしてきましたが、最後に「テストステロン投与」や「アナボリックステロイド」についても触れておきます。
医療としてのテストステロン補充療法(TRT)は、本来
- 明らかにテストステロンが低い
- 医師の診断のもとで
- リスクとメリットを十分に説明したうえで行う治療
として使われます。
一方で、ボディメイク目的で自己判断の投与を行うことには、大きなリスクがあります。
例えば、次のような問題が挙げられます。
- 自前のテストステロン産生が低下し、元に戻らない可能性
- 精子数の減少や不妊リスク
- 血液がドロドロになり、血栓や心血管系イベントのリスク増加
- 前立腺関連のトラブルが悪化する可能性
このように、見た目の変化と引き換えに失うものが大きすぎるため、筋トレ目的での安易なステロイド使用はおすすめできません。
だからこそ、自然な範囲でテストステロンを良い状態に保つことにフォーカスした方が、長期的には圧倒的に得です。
まとめ:テストステロンは「魔法」ではなく「土台」
ここまでの内容を簡単にまとめると次の通りです。
- テストステロンは、筋肉、骨、体脂肪、性欲、メンタル、赤血球など、多くの要素に関わるホルモン
- 筋トレ目線では、筋タンパク質合成を高め、回復力やモチベーションも支える存在
- 肥満や睡眠不足、ストレス、極端なダイエットはテストステロンを下げてしまう
- 自然な範囲でテストステロンを良い状態に保つには、筋トレ、適正な体脂肪、良質な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理が王道ルート
- ステロイドや自己判断のホルモン投与は、見た目と引き換えに健康を大きく損なうリスクがある
テストステロンは「魔法のスイッチ」ではなく、「正しいトレーニングと生活習慣をしている人にボーナスをくれる管理者」のような存在です。
だからこそ、まずは土台となる生活リズムとトレーニングを整え、そのうえでテストステロンをうまく味方につけていきましょう。
パーソナルジムEvolveでは、筋トレや栄養指導はもちろん、睡眠やストレスも含めた「ホルモンバランスを崩しにくいダイエット・ボディメイク」を一緒に考えています。
テストステロンをうまく活かしながら、健康的に体を変えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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